肘がリリースに向けて前下に突っ込んでいませんか?
上図右側はリリースに向け肘がホームベース方向に突っ込みながら投げている状態です。
投球障害を起こしやすいフォームとされているものの1つでDart typeというものです。
肘が下がることで腕を”グリッ”と捻るようにして投げる動作になりやすいです。
(岩堀祐介:運動力学を踏まえた投球フォーム指導:現代医学、63巻2号、2015 より引用)
腕を内側に捻るようにして投げるイメージを持っている人は注意!
(菅谷啓之ら:新版「野球の医学」:文光堂、2017より引用)
腕を捻るように回旋させると、腕の骨の付け根は角度が着いているので、図のように肩関節側は円錐状の軌跡を描きます。
ボールリリース時に肘が下がり、アーム投げ(内旋投げ)になると肩関節内では”グリグリ”とドリルのように関節に負担がかかります。
SLAPと言われるような関節唇損傷(関節のゴムパッキンみたいなものが壊れる)をおこす危険が高くなります。
ピールバックメカニズムというもの
肩を上から見た図です。
上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の長頭腱(筋肉の端っこのヒモみたいな部分)というところが伸ばされて捻れている状態から、さらに捻られることで大きく負担がかかります。
また、この上腕二頭筋の長頭腱という部分は関節唇という肩の関節にありゴムパッキンのようなものに引っ付いています。
(肩の外科 筒井廣明 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院スポーツ整形外科 関節外科 Vol.30 4月増刊号(2011)
そのため、この長頭腱が引っ張られるようなストレスが大きくなると引っ付いているゴムパッキン様の関節唇が剥がれてきたりすることがあります。
これはSLAP(スラップ:上方関節唇損傷)とも呼ばれ、プロ野球選手などでも多いケガの1つです。
(上肢の関節可動域練習 高崎恭輔・他 特集 再考 理学療法基本技術 関西理学 10:33-42,2010)
テイクバックのとり方の影響
(二宮 他:三次元投球動作解析からみた投球障害肩.MB Orthop.30(12):7-14,2017 より引用・改変)
テイクバックでは腕を背中側に引く動きが入りますが、この時に上図のように肩だけの動き(肘を引く動きが強い)で大きく引くと長頭腱にかかるテンションが高くなってしまいます。
これが肩甲骨ごと動くと、引く距離は同じでも長頭腱にかかる負担を減らすことができます。また、これによって「肘下がり」も改善しやすいです。
投球動作において肩甲骨を大きく動かす感覚を掴むドリル
(岩堀祐介:運動力学を踏まえた投球フォーム指導:現代医学、63巻2号、2015 より引用)
腕だけで動きを作らないよう、あえて肘をたたむように曲げた状態で投球動作に近い動作を行うドリルです。
肩甲骨と腕の動きを同期しやすいです。
肩甲骨や胸椎(胸の背骨)を大きく動かす意識で行ってみてください。
腕の振る感覚を矯正するドリル
肘が前に突っ込み、腕を内に捻るようにして投げてしまう人は、少し重めのもの(上図では1kgのボールを使っています。ダイソーで売ってます。)を持って、腹筋や下半身の力に意識をし、腕は振られる感覚でシャドーピッチングをします(腕で力いっぱい振らないようにしましょう)。
ボールの重さと遠心力で腕は自然と外から振られるような感覚になるかもしれません。
動かさなくても痛い、日常生活でも痛み、投げるのをしばらくやめても痛みが変わらないという人は整形外科等の医療機関への受診をおすすめします。
インスタグラムでも動画ドリルやストレッチ・トレーニング動画も配信してますので、興味のある方はチェックしてみてください。ドリル等は画像よりも動画のほうが分かりやすいかと思います。