野球指導の現場でよく耳にする「リリースは前で離せ!」という指導。
一見もっともらしく聞こえますが、実は肩や肘を壊す原因になりかねない危険な意識でもあります。
本記事では「なぜ前で離す意識が間違っているのか」「どのようなリリースイメージを持つべきか」を解説していきます!
理由は大きく分けて3つあります。
1. 肩の至適長(optimal length)から外れる
肩関節の筋肉が一番力を発揮できるのは外転90°、いわば肩のライン上に肘がくる高さです。リリースを“無理に前”に意識すると、その至適長を超えてしまい、肩周りの力が出づらくなり、肩を保護するような筋肉が十分に働かなくなることで野球肩や野球肘などの投球障害に繋がります。
また力が伝わりづらくなるため、球速やコントロールなどのパフォーマンスにも強く影響します。

図1. 肩関節における至適長(Optimal length)
引用元:Full Count/4球連続ストレートに表れた“駆け引き” ダルビッシュがOP戦初登板で得た収穫とは?
2. ダブルプレーンになりやすい
前で離そうとすると、上腕と前腕の面がズレてしまい「ダブルプレーン」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。これは肘に負担をかけ、野球肘のリスクを高める要因です。
シングルプレーンとダブルプレーンの違いについてはこちらをご覧ください
3. リリースで手が寝やすい
手首が遅れて「ボールを舐めるようなリリース」になり、回転が弱くなるケースも多く見られます。その結果、シュート回転やボールが抜ける原因になり、抜けることを嫌がり無理に手首を返そうとすることで肘への負担が大きくなります。
リリースについては今後別記事で詳しく解説していきます!
では、どこでリリースを意識すればよいのでしょうか?
答えは「前」ではなく「体の横」。
実際に多くのプロ投手も体の横でリリースしています。ただし、体幹の回旋や前傾姿勢がしっかり出ているため、外から見ると「前で離している」ように見えるのです。


図2. リリースのイメージ (右:体の横 ⭕️ / 左:体の前 ❌)
引用元:侍ジャパン、王座奪還へのポイント~「史上最強チーム」の死角(5/8):時事ドットコム
どちらも似たようなリリースポイントですが、肩の延長線上のラインに肘があるかどうかが重要です。
このイメージを小学生の段階から持つことが、投球障害の予防にも、将来的な球速・キレの向上にも繋がります。
野球における投球フォームの習得は、実は小学生の時期にこそ最も重要だと言われています。なぜなら、この年代は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、運動神経系の発達が著しく進む時期だからです。
研究によれば、ヒトの神経系の発達は5〜6歳で急速に伸び始め、9〜12歳前後にかけて大きく成熟していきます。この時期に経験した運動スキルは、大人になっても神経回路として強く残りやすく、「一生の運動基盤」となると言われています。
Malina et al, 2004
例えば、リリースポイントの感覚や、肩や肘に負担をかけないアームアクションのパターンを小学生のうちに身につけることは、後々の投球障害の予防につながります。逆に「リリースは前で!」といった誤ったイメージを強く植えつけてしまうと、ゴールデンエイジ期の神経回路に誤学習として固定されてしまい、後から修正するのが非常に困難になります。
さらに、脳科学的にもこの年代は「動きをコピーする力(モデリング能力)」が高い時期です。プロ野球選手の投球フォームを見て真似をすることは効果的ですが、見えている“形”だけを真似るのではなく、その裏にある“原理”を理解させる指導が重要になります。
「リリースは前で離す」という古い常識は、小学生や中高生の選手にとってケガを招くリスクがあります。
実際には「横でリリース」する意識を持つことが、力強く、かつケガを予防した投球につながります。
大分市にあるカタラボ大道店では、理学療法士による動作分析と実投環境を組み合わせ、選手の身体的特徴や現状のフォームから理想的な投球フォームを一緒に作り上げていきます。
将来のパフォーマンスアップのために、今のうちから「正しいリリース」を身につけていきましょう。
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