最近、ありがたいことに色々な選手からコメントやDMを頂いたりするんですが、迷走している人が多いです。
このドリルを取り入れたけど上手く行かない、フォームを変えたいけど難しい…
話をよく聞いてみると「〇〇さんがこっちの方が良いと言っていたので」という流れが大半。
その結果「あなたにはそのやり方は合ってなさそうだよ」と伝えることが多いです。
つまり、お金を払って、時間を使って、情報を集めて上手くなろうとしている選手が、逆にパフォーマンスが下がってしまっている。
そんな現状を目の当たりにすることが少しずつ増えてきたので、今回は僕が最近感じていることを書こうかなと。
言い切れるって凄いこと
僕は理学療法士の資格を持っていて、学会発表をしたり医者や薬剤師など他部門の医療従事者と議論することが当たり前の世界で生きてきました。
そんな僕がTwitterを始めて最初に感じた違和感が「めちゃくちゃ言い切りますやん…」ということ。
なんせ医療現場って「絶対」がないんです。
絶対大丈夫、絶対効果がある、絶対に助かる、絶対に治る、絶対にこっちの方がいい。
そんなものありません。
例え統計的にエビデンスがあったとしても、それは「多くの人に当てはまる可能性が高い」だけに過ぎず、全員に当てはまるわけではないんです。
本当の専門家って、くどい、煮え切らない、細かい、断言しないなど、本質的に「テレビ向きじゃない」と思うんですね。特に医療は不確定要素が多く、知識がある人ほどクリアカットに説明しない。
逆に言えば「白黒はっきりしたメッセージだけを求める人」は良質な情報になかなか出会えない。— 外科医けいゆう|Takehito Yamamoto (@keiyou30) May 20, 2020
それなのに、Twitterやネットの世界って簡単に「こっちの方がいい」って言い切ってしまうんですよね。
まあ確かに言い切ったほうが見ている人にも伝わりやすいし、キャッチーで広まりやすいのもわかるんですが、その弊害として「当てはまらなかった人」がとても困っている。
エビデンスがないことだと尚更で、「俺の経験からこの方法だと大半の人がうまくいく」の「大半」が7割だった場合、その言葉を信じた3割の人が迷走しちゃうんです。
これって罪深いなと。
フォームに正解はあるか?
これが多くの議論を生んでいるテーマだと思います。
ただ僕は、フォームを「点」で見たときの正解ってほとんど無いと思っていて。
この「点」というのは、
- 並進運動の時に軸足の膝が〇〇
- 腕を上げたときの肘の角度が〇〇
- 踏み出し脚の膝の角度が〇〇
のような「フォームのある一点だけを切り取って良し悪しを判断すること」です。
フォームに正解があったとしても、それはフォーム全体を統合してからの判断ではないかなと。
例えある一点が通常のフォームから逸脱していたとしても、その前後でバランスが取れていればいいのではないでしょうか?
人によって、力を溜めるタイミングも力を生み出す筋肉も、完全に一致するわけではないので。
現在、フォームの点だけ変えようとしてしまっている人は、全体のバランスを崩していないかチェックしながら進めていきましょう。
もしも各フェーズで「正解」があるとすれば、そろそろ世界中のトップ選手たちが似たようなフォームになってきそうですよね。
フォームを変える ≒ 姿勢を変える
さて、「正解がある」と主張する人たちの思考の大前提にあるものとして、「姿勢を変えることができる」というものがあります。
なぜなら、その人の無意識の姿勢や重心コントロールの設定で使いやすい筋肉や関節を動かしやすい方向が変わるから。
パワーポジションが人によって違うのも姿勢の影響ですよね。
なので、正解が1つだと主張する人は姿勢を変えることができる前提じゃないと矛盾が生じてしまうんです。
ただ、もしこの記事を読んでいる専門家の人がいれば同意してくれると思うんですが、姿勢ってちょっとやそっとじゃ変わらないんです。
ひとつ注意してほしいのは、ここでいう「姿勢」は俗に言う「猫背や反り腰」といった見かけ上の姿勢ではなく、脱力したときに骨が移動しやすい方向のことです。
脱力した時に骨盤が前傾しやすいひともいれば、後傾しやすいひともいます。
もし骨盤が後傾しやすいひとが意識して前傾させたとしても、無意識になった途端、後傾位に戻るんですよね。
そもそも「姿勢」は、
- 骨格
- 筋膜のテンセグリティ
- 足部のアライメント
- 先天的なラキシティー
- 脳への神経的フィードバック
- 呼吸
- 生活様式
- 心理的要因
など、様々な要因が組み合わさった結果に過ぎません。
さて、ハムストリングスを良く使えるようにするため、脱力したときに骨盤後傾しやすい人を骨盤前傾しやすい人に変えるためにはどうすればいいでしょう?
オリジナルの足底板を作り、生活様式を変え、筋膜のテンセグリティを調節した上で、ひたすら運動学習を繰り返せば「もしかしたら」姿勢は変わるかもしれません。
ただ、実際の臨床で「姿勢のパターンを変えよう」と思うことは基本的にないんですよね。
姿勢が変わるかどうかも定かではなく、変わったとしても莫大な時間がかかり、変わったとしてもパフォーマンスが上がる保証もない。
それなら、それぞれの姿勢に得意不得意があるので、その特徴を活かしながらパフォーマンスが上げていけばいいのかなと。
それぞれのタイプの頂点を目指そう
結論としては「色々な姿勢、色々なタイプが存在するから、その中で頂点を目指せばいい」という考えです。
メジャーリーガーも全員同じ身体の使い方はしていないので、あなたにあった身体の使い方をしているお手本を探してみてはいかがでしょうか?
自分にあったトレーニングやドリルを探せるようになると、また一段とレベルアップの近道になるかもしれませんね。