「肩や肘ばかりケアしてきたけど、なぜか痛みが取れない…」
「治療に行ってるけど、その時は良くて投げ始めるとまた痛くなる」
大分でも野球をしている選手や保護者の方から、こうした相談をよくいただきます。
実は投球障害の原因は、肩や肘そのものだけでなく、胸郭(きょうかく)の動きにも深く関係しています。
また別記事の「僧帽筋下部」をうまく使うためにも胸郭の動きは非常に重要になってきます。
肩甲骨の使い方「僧帽筋下部」はこちらの記事をご覧ください
特に胸の奥の「後縦隔(こうじゅうかく)」が硬くなると、呼吸が浅くなり、体幹や肩甲骨の動きが小さくなります。その結果、肩や肘に余計な負担がかかり、野球肘・野球肩といった投球障害へとつながってしまいます。
投球は簡単に説明すると「足→骨盤→体幹→肩甲骨→肩→肘→ボール」という一連の連動(キネティックチェーン)で成り立ちます。
どこか一つでも硬さや弱さがあると、その分を肩や肘で帳尻合わせしなければならず、結果的に「投球障害」を引き起こしてしまいます。
つまり、肩や肘のケガは“結果”であり、原因はもっと体の中心部分にあることが多いのです。
胸郭は、肋骨・胸骨・背骨でできた「胸のカゴ」

図1. 胸郭の全体像
この胸郭がしなやかに動くと、
- 呼吸が深くできる
- 体幹がしなやかに安定して回旋できる
- 肩甲骨が安定して動ける
といった投球に欠かせない土台が整います。
逆に胸郭が硬いと、呼吸も浅く、体幹が固まり、肩や肘に余計な負担がかかります。
胸郭の奥=後縦隔が硬くなると、
- 背中の緊張が高くなる / 腰が丸まりやすい
- 息を吸っても胸の奥が広がらない
- 肩甲骨の動きが制限され, 安定しない
といった問題が起きます。
投球では胸を大きく開きながら腕を振る必要がありますが、胸郭が広がらなければ肩や肘で無理をしてしまい、障害につながるのです。
またよく野球選手で見られるのが, 翼状肩甲(scapular winging)という肩甲骨機能不全です。

図2. 翼状肩甲
この翼状肩甲という機能不全は小学生や中学生にもよく見られるもので、肩甲骨が胸郭から完全に離れ、浮いているような状態になるものです。
翼状肩甲になると肩甲骨を安定させる筋肉(前鋸筋 / 菱形筋 / 僧帽筋下部)が伸張され、収縮が困難となり安定性が失われます。
この翼状肩甲の原因の一つとして、胸郭(後縦隔)の拡張制限が挙げられます。
① 呼吸が浅い → 体幹が安定しない
胸が広がらないと呼吸が浅くなり、腹圧(体幹の安定感)が低下。肩や肘に無理が集中します。
また浅い呼吸だと首周りの筋肉が優位になり、僧帽筋上部線維・肩甲挙筋の過活動に繋がります。
② 肩甲骨が安定しない → 肩への負担増
肩甲骨は胸郭の上をすべるように動きます。縦隔が拡張せず、肩甲骨が安定せず、肩の内旋トルク/肘への外反トルクが増大し、野球肩/野球肘の発症に繋がります。
③ 神経・血管の圧迫 → しびれや違和感
胸郭が硬いと、鎖骨と肋骨の間で神経や血管が圧迫され、腕にしびれやだるさが出る「胸郭出口症候群(TOS)」につながることもあります。
胸郭の硬さと肘の障害
日本国内の少年野球選手90人を対象に胸郭の反れる角度を測定したところ、肘に障害がある選手ほど胸郭の伸展角度が小さいことが分かりました(障害あり71.4°、障害なし75.7°)。
(Gonno et al, 2022 – MDPI論文)
つまり、胸郭が硬い選手ほど野球肘になりやすい、という明確なデータです。
胸郭出口症候群(TOS)と投手
MLBの投手を対象とした研究では、TOSの手術を受けた投手の約75〜80%が復帰でき、球速や成績に大きな差は見られなかったと報告されています。
(Michael J Gutman et al, 2021 – PubMed)
つまり、胸郭周りの問題は投手にとって深刻な障害になりますが、早期に気づき適切に対処すれば復帰可能です。
① 10-10-10 breathing
仰向けで鼻から息を吸い、体幹の中にある風船を四方へ広げるイメージ。鼻からゆっくり吐き、胸郭をしぼませる。慣れてきたら10秒吸う→10秒吐く→10秒止めるようにやってみてください。
② First position breathing
土下座をするような形で座ります。鼻から息を吸い、背中から腰にかけて広がるようにイメージしてください。吐く時には力を抜き、肩がすくまらないように注意してください。
③ 肩甲骨の安定トレーニング
胸郭上で肩甲骨を安定させる。胸椎部を丸くするようにイメージし、プッシュアップの時にお腹周りから持ち上げる意識を持ってください。腕周りだけで力んで挙げないよう注意してください。
- 投球障害(野球肘・野球肩)は肩や肘だけの問題ではなく、胸郭の硬さが大きな要因。
- 胸郭の可動性がある選手ほど肘の障害は少ない(研究で証明済み)。
- 胸郭出口症候群のように深刻な症状でも、適切に対処すれば復帰できる可能性は高い。
大分市大道の 肩専門ケアセンター・野球特化型ジム「カタラボ」 では、胸郭や体幹の動きに注目しながら肩・肘の障害をケアしています。
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胸郭を整えることは、あなたの投球を守るだけでなく、パフォーマンスを引き上げる“見えない武器”になります。
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